経営者には、企業を維持発展させる義務があります。
経営は一人ではできません。一人親方でやったとしても、少なくともお客様が必要です。規模が大きくなれば、従業員も増えてきますし、仕入先や取引先も増えてきます。ひとつの企業の破綻はいろいろな人に迷惑がかかります。
ドラッカーは「経営とは人を幸せにする仕組みである」といっています。そのためには、企業を維持発展させることが必須であり、誤解を恐れずに結論からいうと、維持発展させるためには利益を出し続けていくとが必要です。
しかしながら、国税庁の統計によれば企業の7割は赤字決算であり、帝国データバンクや税理士などの事情通によると、無理して黒字にしている会社もあるため、実質は8割程度が赤字だろうという話です。
私が感じるのは、「維持発展」させようとか、「利益をだそう」などと考えていない経営者が少なくないということです。
周りにいる経営者に、「今月の売上目標は?」とか、「今季の利益目標は?」などと問いかけても、「前年なみ」とか「とんとんで」など数字ではない返事がくることは、少なくないでしょう。
「企業を維持発展」させること、そのためには「利益を出し続けること」、さらにいえば利益とは売上を上げ経費を抑えて出てくること、これらのことが身についていない経営者が少なくなく、それは経営者自身の責任を自覚していないといえます。
自動車を運転するには、自動車学校に通い、運転の実際と理論を学び、試験に合格して運転免許証を持つことが必要です。しかしながら、経営者になるには資格も免許証もいりません。誰でも社長になろうと思えばなれます。
経営に失敗すれば多くの人に迷惑がかかります。経営者にこそ免許証が必要です。
なぜ、企業を維持発展させるためには利益が必要なのかを説明します。

会社は、貸借対照表の左側、資産を使って商売(売上を上げて費用を払う)をします。
その資産のでどろころは貸借対照表の右側、負債か純資産です。
負債は他人からの借入で返済しなければなりませんので、純資産を増やすことが求められます。
純資産を増やすには、資本金を増やすか、利益をコツコツ積み立てていくしかありません。
そして、負債の場合は元金を返す必要がありますが、その出処は利益です。
資本金を出してくれた株主には配当を出す必要があり、やはり出処は利益です。
利益を積み立てるには、当然、利益が必要です。
利益を上げるには損益計算書の世界で、売上をあげ、費用を抑えて、その差額が利益となります。
この利益には税金がかかり、税金を払った残りから、配当や借入返済を行い、その上で残った利益がやっと積立にまわります。
経営者は税金を払う覚悟を決め、利益を上げる努力をすることが必要なのです。
では、その利益をあげるにはどうしたら良いのでしょう。
街中で1万円札を取り出し、これを7千円で売るよと声をかければ沢山の人が集まり買ってくるでしょう。
しかし、7千円を出して、これを1万円で売るといっても誰も買ってくれないでしょう。利益をあげるとは、7千円を1万円で買ってもらうことなのです。
経営学には110年の歴史がありますが、その経営学を極めた学者が大企業を作り上げたという話は聞いたことがありません。経営学に確実に利益をあげる方法があるのであれば、会社を作り、それを実行し、会社を大きく発展させた経営学者がいても良いはずです。
しかしながら、以前紹介した「行為の経営学」(沼上幹 白桃書房 2000年 3300円+税)や「経営は哲学なり」(野中郁次郎 ナカニシヤ出版 2012年 2000円+税)でも書かれているように、経営においては、これを行えば絶対確実という絶対的法則や普遍的方法論はありません。
何を買ってもらうのか、誰に買ってもらうのか、いくらで買ってもらうのか、商売には様々な要素があり、それは常に変化します。そして、買うか買わないかは相手の意志次第であり、こちらに決定権はありません。そのような状況では、利益をあげる普遍的法則など存在しないのです。経営書やハウツー物を読んで、それで利益があがると考えるのは早計です。
では、経営学は経営の役にたたないのか?いえ、そんなことはありません。
「経営においては、これを行えば絶対確実という絶対的法則や普遍的方法論はありません。」と、書きました。
しかし、厳密にいえば、上記の言葉の条件として、「相手のあることにおいては」というのが付きます。
つまり、相手のあることであれば、相手の意志があるので、こちらの思い通りにはなるとは限らないのですが、これは逆に、自分の世界のことであれば自分の意志次第であるともいえます。
京セラ創業者の稲盛和夫さんは「心を高めて、経営を伸ばす」とよくいわれています。
心を高めることは自分の意志で次第でできることであり、それによって経営を伸ばそうといわれているのです。
私自身の経験や、30年間の仕事や各種の勉強会などを通じて接してきた人たちを見ると、確かに心を高めることが経営を伸ばすことであると実感できます。
経営のためには、心を高めること、そして、そのための幾つかの具体的な方法があります。
これらのことは、経営学という科学から生まれたものというよりは、人生を生きる哲学から生まれたものだといったほうが良いかもしれません。
そんなことを考えていたら、つい最近、「経営は哲学なり」(野中郁次郎 ナカニシヤ出版 2012年 2000円+税)という本が出版され、びっくりしてたところでした。
経営を伸ばすためには、そのために自分たちでできることをコツコツ積み上げていけば良いのです。
以前の「心を高め、経営を伸ばす 3.森羅万象を成長発展させる力」では、
「人間は、いえ生物は、いやいや無機物を含め万物すべては、もとはひと握りの素粒子であり、宇宙開闢から徐々に成長発展してきたものだからです。より良い世の中にしたいと思う、世のため人のためという思いからの行動が、その人の魂を磨き、人々を感動させる芸術と評価されるのだと思います。」
と、書きました。
経営においても「世のため、ひとのために何を行うのか」という理念を明確にし、それにそって日々自ら切磋琢磨していくことが心を高めることにつながり、それが経営を伸ばすことにつながるのです。
そして、「心を高め、経営を伸ばす 4.調和させる力」で、
「誰にも負けない努力を重ね、企業が発展し大きくなっていくと、先ほどから繰り返してきたように、経営者がおごり高ぶり、傲慢になっていきます。そこで今度は「調和」をすることが大切になってきます。
まずは、自分の会社の従業員の幸福を実現するための戦略・戦術を練る。そして取引をしている相手先の方々を、いや、自分たちが住んでいる地域社会の人たちも幸福にするというように、自分のビジネスを通じて、企業の周囲を取り巻く人たち全てに幸福をもたらすことができるような戦略、戦術をとっていかなければならいのです。」
と、書いたように、おごり高ぶらずさらに謙虚になることにより調和の力が働き、より一層経営が伸びるのです。
これらのことは、企業をとりまく環境がどうであれ自分たちでできることであり、経営を伸ばす原理原則といえます。
最近読み始めた管理会計のテキストの冒頭には、経営管理とは、経営管理者が組織目標の達成のために遂行している仕事であり、それはリーダーシップとPDCAサイクルを廻していくことだと書かれています。
PDCAを廻していくには、上司は部下の個人目標に訴えて組織目標と一致させるか(目標一致)、組織目標に即した行動を求める必要があります。(行動一致)
この実現のためには部下に支持される考え方を上司が持っている必要があります。それは組織目標が、誰が考えても正しい目標であること、つまり哲学に通じているものであり、それが組織に浸透している必要があるということです。
激動する環境のもとで目標を見失わないためには、いつの時代でも、誰が考えても、普遍的に正しい目標を持ち、北極星を目印に航海するように、その目標に向かい時代の波を乗り越えていかねばなりません。
経営とは哲学を掲げて、組織が心を一つにして取り組むものだといえます。
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