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管理会計の面白さ

2019年4月10日 水曜日

大学の授業も始まりだしてきており、私も非常勤講師として、ある大学の「管理会計論」の講義を今年もやることになり、今日が最初の授業でした。

学生には、管理会計とはどんなものか、そしてその目的、意義を説明しましたが、7年前のこのブログでは、自分自身が博士後期課程の社会人大学院生として管理会計を学ぶ立場で、次のようなことを書いていました。

 

以下、2012年4月14日の「経営と管理会計」より

今年は前後期それぞれに2教科受講する予定ですが、前期の1つが「現代管理会計情報特論」です。現在、その授業の準備として、「管理会計の基礎」(溝口一雄編著 中央経済社 1987年 3000円+税)と「エッセンシャル管理会計」(谷武幸 中央経済社 2009年 2800円+税)の2冊を読んでいます。

(中略)

上記の「管理会計の基礎」には、次のように書かれています。
「経営者は、企業の利害関係者の誰がみてもよいように、財務諸表を公表するものである。」

現代の企業会計は、「財務会計」と「管理会計」の二つの会計から成り立っているが、「財務会計」は、財務諸表(貸借対照表・損益計算書など)を公表するための会計だと書かれています。財務諸表が誰が見てもよいようにということは、そこには何らかの社会的な決まりごと、社会的ルール、制度のもとで作られることを意味し、自分の会社独自の「財務会計」というのは成り立たないということになります。

一方、「管理会計」はまったく自由に企業の目的との関係から会計をみているものであり、企業経営のための管理の手段として、企業会計の機能を考えるもので、「管理会計」は「経営者のための会計」といえます。

さて、皆さんの会社では、財務諸表が利害関係者の誰がみてもよいように公表されていますか?
また、企業経営のための管理の手段であり、「経営者のための会計」である「管理会計」をどのように利用されていますか?

さらに、本には、「企業は社会がそれに何かを求めて生まれたものである。」とあり、そして企業は、「社会が作り出した社会的形成体であるから、この社会が要求する目的に応えなければならない。もし、企業がその要求に応じなければ、その存在の意義もないわけである。」とあります。

(中略)

正直言って「管理会計の基礎」という本に、このような経営の本質的な意味についての記述があるとは思いませんでした。また、社会経験を踏まずに学部学生時代にこの記述を読んでも、頭の中を右から左に通り過ぎて行ったと思います。しかしながら、この第1章「管理会計の意義」に書かれていることは、企業経営の本質について書かれており、経営者必読のものと思います。著者の溝口一雄先生については何も知らないのですが、本質を的確に記述している様子は、表現が変ですが、名人・達人の域の先生なのだと感じます。

また本では、15世紀に複式簿記の典型があったとあり、そのころの企業について、こう書いています。
「そのころの企業、いいかえると、資本主義の初期の企業は個人企業(数人の出資者による場合を含む)であって、企業者と経営者が一体であった。」
「したがって、また経営規模も小さく、経営の管理もまったく企業者の個人的な能力に依存した、主観的で非システマティックなものであったのはいうまでもない。」

15世紀の話なのですが、21世紀の中小企業は未だにこのレベルです。
そして大事なことは、「企業者の個人的な能力に依存した」経営ですから、企業者つまり経営者が自分個人の能力を伸ばす以外に経営を伸ばす方法がないということです。

(中略)

「エッセンシャル管理会計」(谷武幸 中央経済社 2009年 2800円+税)という管理会計の本を読んでいます。上で紹介した「管理会計の基礎」(溝口一雄編著 中央経済社 1987年 3000円+税)でも感じたのですが、管理会計とリーダーシップには密接な関係があるようです。まだまだ手探り状態ですが、前者の本で、リーダーシップに関して気になったところをあげておきます。

経営管理とは、「組織のさまざまな改装における経営管理者が組織目的のたっせいのために遂行している仕事」であり、「その内容は、部下に対するリーダーシップ(指揮)に加えて、PDCAである」

計画が必要な理由。環境が不確実だからといって場当たりの行動をとったのでは経営は成り立たない。経営方針、経営戦略を策定し実施する必要がある。
経営方針:企業の経営理念や長期目的
経営戦略:経営方針を実現するために経営を資源を何に配分するかの大綱
戦略実施:経営方針や経営戦略を実現すること
マネジメントコントロール:戦略実施のPDCAサイクル
「PDCAサイクルを回すことにより、経営管理者が戦略実施を図るプロセス」

モチベーションの問題:個人目標に訴えて、組織目標に一致した行動を組織構成員からどのように引き出すか。目標一致、行動一致。

インプットとアウトプットが不明確:上司がどのように部下に働きかければ、部下から期待した行動を得ることができるかというインプットとアウトプットの関係は不明確。
人間の判断が必要:上司は部下の行動を判断しながら行動一致に向けリーダーシップを発揮しなければならない。

この、「モチベーションの問題:個人目標に訴えて、組織目標に一致した行動を組織構成員からどのように引き出すか。」、「目標一致」、「行動一致」。という記述について考えたいと思います。

目標一致とは組織の目標と個人の目標が一致することですが、これを難しいことだと考える人がほとんどです。
筆者の谷先生も、「個人目標と組織目標の同一化は必ずしも必要でなく、組織構成員が組織目標の達成につながる行動をとればよいからである」と書いています。

組織の目標が組織にとって利己的なものであれば、組織構成員がそれと同じ気持ちにはなかなかなり得ないでしょう。では、組織目標が利他的なものであって、誰が考えても納得するものだったらどうでしょう。

誰が考えても正しいというのは、哲学に通じます。時代が変わっても、誰が考えても正しいことを追求するのが哲学です。組織目標も哲学に達したものであれば、誰もが納得しても不思議はないでしょう。

今、たまたま結果がでている行動をとっているだけでは、次の行動の結果がどうなるかはわかりません。皆が納得できる組織目標で、考え方のベクトルを揃えることが大切だと思います。

経営の環境が安定していれば、トップの意思決定に基づいて下位者が作業するという集権的な仕組みでも問題ありませんが、現在のような激変する経営環境では(ほんとうは昔も、どの時代でも激変していると思いますが)、意思決定の権限を下位者に移譲し、環境変化にあった意思決定をタイムリーに行なっていく必要があります。

しかし、その意思決定が個人の考え方によってバラつくようでは組織としての整合性がとれません。各人の意思決定が組織目標に適合している必要があります。

伊丹敬之さんは、「マネジメント・コントロールの理論」(岩波書店 1986年)で、マネジメント・コントロールを
「階層的な意思決定システムにおいて、下位者に対して権限委譲された業務プロセスのコントロールや意思決定を、さらに上位者からコントロールすること」
と、書いているそうです。

下位者の意思決定を上位者がいちいち確認することは非現実的であり、下位者の意思決定が組織目標から外れないためには、考え方の一致、「目標一致」が不可欠だと考えます。

以上、7年前のブログですが、自分自身の考えの根っこはここにあります。

  

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社長ごっこ

2018年10月31日 水曜日

5年ほど前にこのブログで紹介した伊丹敬之さんの『よき経営者の姿』に書かれている次の一節を、改めて紹介します。

「まず、自分には能力があって社長になったと思い込む。そして、能力を確かめたくなる。かっこをつけたくなる。そのため、社外のいろいろな会合(できるだけハイレベルで有名人が集まる)に頻繁に顔を出すようになる。そこで得た情報が最先端の情報、時流と思い込み、社内ではオレしか知らない、とひそかに自慢に思うようになる。そして、その情報をもとに、『社長ごっこ』『経営ごっこ』が始まる。
かっこよく業績を上げることを考え、それは難しくないと思い始める。それが簡単ではない現実を見ると、うちの会社は本当に馬鹿ばかりでどうしょうもない、という発言をするようになる。社長の集まる会合でも、同じような素質を持った社長連中が集まっているため、『うちはだめなやつが多くて』とお互いに愚痴を言って、満足するようになる。
そして、また自社に戻って、社長ごっこ、経営ごっこをする。それは、業種が異なっても同じである。集まっては散らばり、を社長たちはあちこちで繰り返して行うのだから、社長ごっこの誤りは日本中に広まり、みんながグローバルスタンダードに従え、と言い出すことになる。」

 

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人を通して事をなすということ

2016年5月13日 金曜日

 伊丹敬之著「経営を見る眼」(2007年 東洋経済新報社 1600円+税)には、「経営とは、人を通して事をなすこと」とあります。

 タクシーに乗って目的地へ行く、これはまさに運転手という他人を通して、目的地へ行くという事をなすことといえます。

 その場合、運転手に目的地を伝えることが必要ですし、運転手がその目的地までの道を知らなければ、いちいち道を教えることが必要となります。

 経営の目的である経営理念が明確でなければ目的地を伝えることはできません。
また経営理念の目的地だけでは、具体的にどこに向かって良いのかがわかりません。
経営理念の実現にむけ、具体的にどういう姿を目指すのかというビジョンと、そこへ到達するための道筋である経営方針、経営戦略が必要であり、さらに具体的な目前の計画、経営計画が必要です。

 そして計画通りに進んでいるのかいないのかを確認しながら、道を間違えたようなら正しい道に戻る、また計画していた道が工事中などで通れないときは別の道を探す、そんなことが必要です。

 

 

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経営とは何か?

2016年5月12日 木曜日

 今年の四月からは「管理会計論」の講義も大学で行うようになりました。
管理会計とは、簡単に言えば「経営のための会計」なのですが、では「経営」とは何か?
これについて、最近改めていろいろ考えています。

 経営を行う者が経営者ですが、溝口一雄著「管理会計の基礎」(1987年 中央経済社 3000円+税)には、「経営者はなんのために行動しようとしているかといえば、企業をめぐるいろいろな利害関係をもった集団の利害をまとめ上げ、これらを調整しながら、企業の本質的な目的を追求していくものだといえる」とあります。

 また、伊丹敬之著「経営を見る眼」(2007年 東洋経済新報社 1600円+税)には、「経営とは、人をとおして事をなすこと」とあります。

 経営とは経営の目的の実現を図る行動ですが、それは経営者一人で行うものではなく、他の人をまきこんで行うものと理解できます。

 この他の人をどのように巻き込むか、一緒に目的達成の行動に参加してもらうか、ここが経営者の悩みどころといえるでしょう。

 明日は、たとえばタクシーに乗って目的地に行く、そんな例で経営を考えみます。

 

 

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管理会計と経営1

2016年4月27日 水曜日

 財務会計や税務会計に代表される制度会計は外部報告のための会計、一方、管理会計は内部向けの経営のための会計といわれます。

 では、管理会計では経営とはどんなものとみなしているのか?

 今日から何回かにわたってこれに関することを書いていきます。

 キーワードは、伊丹敬之一橋大学名誉教授が「経営を見る眼」(東洋経済新報社 2007年 1728円)に書いた、「経営とは他人を通して事をなすこと」でしょう。

 

 

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理念と計画と組織図 その6

2015年9月5日 土曜日

 昨日、
「この一店舗で苦労する会社と、多店舗展開できる会社は何が違うのでしょう?」
と書きました。

 一店舗で苦労している会社は、経営者が良く言えば臨機応変に、悪く言えばその場しのぎに事にあたっており、多店舗展開できている会社は経営者が店長と言う部下に任す仕組みができているといえます。

伊丹敬之さんは1978年の論文「マネジメント・コントロールシステムについての覚書」(https://hermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/rs/bitstream/10086/9759/1/HNshogaku0002000690.pdf)で、次のように書いています。

 「筆者は、マネジメント・コントロールの本質は、階層的な意思決定システムにおいて下位者に対して上位者から権限委譲された意思決定を上位者がコントロールして行くというところにあると考えている。」

 店長に任せるといっても、店長の好き勝手にやらせるのではなく、おのずと組織目標にそうような行動を促す仕組み、つまりマネジメントコントロールができているということです。

 小さな会社が小さいまま終わるか、大きくなるか、このマネジメントコントロールが構築できるか否かということになります。

 伊丹さんは、「経営とは、他人を通して事をなすこと」ともいっています。
経営とはマネジメントコントロールを構築することといえます。




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経営とは、他人を通して事をなすこと その2

2015年8月20日 木曜日

 昨日、以前読んだ、「経営を見る眼」(伊丹敬之 東洋経済新報社 2007年 1728円)より、
「経営とは、他人を通して事をなすこと」
という言葉を紹介しました。

 伊丹さん自身が社外取締役を勤めていた東芝で、
不適切会計をはじめとする問題がおこっていることを考えても、
なかなかこの「経営とは、他人を通して事をなすこと」は難しいものだとわかります。

 まして、小企業・小規模企業の場合あであれば、
「経営とは、他人を通して事をなすこと」以前に、
「経営者自分自身で事をなすこと」をしなければなりません。

 小企業・小規模企業が維持・発展していくためには、
経営者自身で、うまくいく仕組みをつくり、その仕組みをして、
「他人を通して事をなすこと」の仕組みにつなげていく必要があります。




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経営とは、他人を通して事をなすこと

2015年8月19日 水曜日

 以前読んだ、「経営を見る眼」(伊丹敬之 東洋経済新報社 2007年 1728円)に、
「経営とは、他人を通して事をなすこと」
と書かれていたことが記憶に残っています。

 先般、「マネジメントコントロール」について、
・経営管理者が経営理念や長期目的、経営戦略を実現することを図るプロセスをマネジメントコントロールという
・マネジメントコントロールのためにはPDCAサイクルを回すことが必要である
大きな会社では、経営者のマネジメントコントロールや部長のマネジメントコントロールなど、複数のマネジメントコントロールが存在することになります。
と書きましたが、伊丹先生にも「マネジメント・コントロールの理論」(岩波書店 1986年 3000円+税)という著書があります。

 経営とは、他人を通して事をなすことであり、マネジメントコントロールの観点からも、そのためには目標と計画が必要であることがわかります。

 今日の日本経済新聞社の記事で、東芝の不適切会計の起きた時期に取締役を務めており、現在、辞任を求める声が起きているという記事を読んで思い出しました。




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会社は誰のもの? 利益のゆくえは? その3

2014年11月28日 金曜日

 カシオやアマノなどの日本企業でも利益のほとんどを株主配分しているという11月21日の日経新聞1面の記事と、今から7年前の2007年にアメリカ企業のそのような傾向に警鐘を鳴らした伊丹敬之先生の本、「経営を見る眼」を紹介しました。

 もう一度「株主配分」ということを考えてみると、
1.株主配当として税引き後当期利益から株主へ配当を渡す、
2.自社株買い(市場に流通している自社株を買う、買った金額分の現預金が貸借対照表の資産の部から減り、同額が純資産の部から減ることになります)で、一株当りの価値を高める(株価が上がり、株主に利する)
ということになるかと思います。

 では、なぜこのようなことをするのでしょうか?
それは、「強欲な株主」の出現によるものだと思います。

 「強欲な株主」が優良企業に目をつけ、そこの大株主となり、もっと配当を寄こせ、もっと俺たちを儲けさせろ、と声を大にし、その声に従う経営者を優遇する、そんな図式が見えます。
株主も経営者もその会社に永続的にいるつもりはなく、目先の利益だけを追っての行動のように思えます。




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会社は誰のもの? 利益のゆくえは? その2

2014年11月27日 木曜日

 昨日、11月21日の日本経済新聞のトップ記事は「利益の大半 株主配分 カシオ9割 アマダ全額」という見出しであった、と書きました。
ここでいう株主配分とは、株主への配当や自社株買いをいいます。
自社株買いとは、市場に流れている自社株を買い戻すことで、これを行うと資産である現預金と純資産である資本金などが減ります。
昨日書いた、毎年毎年利益を出し、内部留保を高め自己資本比率を高めるという話とは真逆の話となります。
なぜ、このようなことをするのでしょう。

 2007年に出版された伊丹敬之さんの「経営を見る眼」(東洋経済新報社 1600円+税)には、次のようなことが書かれています。

 利益という数字は、規模の大きな会社ほど大きくでる。そうすると規模の違う企業の比較には不適切であるので、ROE、自己資本当期利益率という指標がある。
これは自己資本に対する当期利益の割合であり、これを経営者が気にし始めるととたんに、「さまざまな妙な行動を取る経営者が出てくる」。
この比率を大きくするには分子の当期利益を増やす以外に、分母の自己資本を小さくする手がある。自己資本を少なくするには、自社株を株主から買い戻して、資本の払込金額を小さくする方法がある。

 以上のようにROEと自社株買いについて説明し、以下のように続きます。

 「自己資本が小さくなってしまった後に資金調達の必要が生じたら、負債で調達すればいい、と次には考えることにある。とすると、自己資本が小さくて負債が大きい企業は、借金の金利を払った後で利益が出せるなら、ROEも一株当たり利益も大きくなることになる。それが、高度成長期の日本企業の姿であった。そして、現在のかなりのアメリカ企業の姿でもある。負債は返済を前提とした逃げるカネであることを考えると、逃げるカネに頼り、逃げないカネを小さくする経営をしていることになる。財務体質として健全であるとは言えそうもない。」
(戦後の日本企業はROEを意識してそうした訳ではなく、借金しか資金の調達方法がなかったからです。)

 「現在のアメリカ企業では、ROEを大きくするためにあえて借金経営でもよしとしている経営者がかなりあるようだ。自分の評価がかかっているからだろう。それが危険なことに見えるのは、私だけだろうか。」




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