本日7月16日、『今、改めて「明治の精神」を考える』という日本会議北海道主催の講演会に参加してきました。
参議院議員の山谷えり子さん、日本政策研究センター代表の伊藤哲夫さん、慶應義塾大学講師の竹田恒泰さん、そして元総理大臣の衆議院議員安倍晋三さんらが講師でした。
安倍さんはつねづね「戦後レジームからの脱却」という言葉を使っています。レジームとはもとはフランス語で「体制」の意味ですから、「戦後レジームからの脱却」ということは、「戦後体制からの脱却」という意味であり、では「脱却」してどこへ行こうとしているのかということが、今日の講演で、「明治の精神に立ち返ろう」ということだと理解しました。
私はつねづね近現代の日本において、次元が変わるような大きな変革があったのは明治維新と第二次世界大戦の敗戦だと考えていますが、この二つの大変革にはどのような違いがあるのでしょうか。敗戦後の世界は現在の世界ですので、明治維新の前後、江戸時代と明治時代の違いから「明治の精神」について、今週、整理してみようと思います。
ちなみに今年は明治天皇崩御100年にあたる年で、明治天皇をお祀りする北海道神宮でも写真展などのイベントを開催しています。
http://www.hokkaidojingu.or.jp/news/pdf/panelten.pdf
また、今日は「海の日」でしたが、明治天皇が初めて船で巡幸され、明治9年の7月20日に青森から函館を経由して横浜に戻られた日であり、それを記念して7月20日を海の記念日とし、その後祭日となり、現在のハッピーマンデーの第3月曜日となりました。
余談ですが、講師の竹田恒泰さんは明治天皇の玄孫(やしゃご:ひ孫の子)だそうです。
?
?
?
明治維新は、それまでの「士農工商」という身分制度を崩壊させました。身分が一番上だった「士」が無くなったのです。
官軍側の武士であれば、まだ役人になる可能性があるかもしれませんが、幕府側についた藩の武士たちはどうやって生きていくかを真剣に考えなければなりませんでした。
英語で「武士道」を書いた新渡戸稲造や、これまた英語で「代表的な日本人」を書いた内村鑑三は、これからの世界は新しく欧米の技術を身につけるより生きる術がないと考え、まず英語学校に学び、そしてできたばかりの札幌農学校の2期生として海外の技術を学びました。
また、渋沢栄一は、これからは「商」の時代だと考え行動しますが、この話はまた明日にします。
?
現在でも、いつの時代でも、変革の時代、激動の時代といわれます。そのような次代を乗り越えて行くには、常にこれから先がどのように生きていくかを考えていく必要があるということを先人たちは教えてくれます。
毎日毎日の日々の出来事に対応するだけでは、いつもの間にか時代遅れとなって、世に取り残されてしまうことになります。
?
?
?
「士農工商」という身分制度のトップの「士」が無くなった明治維新、渋沢栄一はこれからの時代は「商」、商人の時代だと考えました。
商人、ビジネスマンが世を引っ張ってくためには正しい考え方としっかりした実利主義が必要で、それが「論語と算盤」という言葉の由来でしょう。
二宮尊徳も「道徳なき経済は犯罪であり、経済なき道徳は寝言である」といっています。
話を渋沢に戻しますが、その志高き商人を育成するにはそのための学校が必要であると考え、東京高等商業学校、のちの一橋大学を設立させました。
高等商業学校、官立(国立)の高商は、その後、神戸、山口、長崎に作られ、小樽商科大学の前身である小樽高商は全国5番目の官立高商となります。
(東京高商と神戸高商の間に府立の大阪高商が建てられています。)
渋沢栄一は500以上の企業を起こしたともいわれていますが、それもこれも、これからの日本に必要だという思いによるものでした。
?
?
?
7月16日の「明治の精神を考える 1.講演会に参加して」で紹介した北海道神宮でも写真展のイベント(http://www.hokkaidojingu.or.jp/news/pdf/panelten.pdf)ですが、そこには明治天皇によって示された教育勅語も掲示されていました。

明治維新後、近代国家の建設のためには人材育成が急務であると、明治5年に学制を公布し、全国に学校を設置して義務教育の制度を確立し、教育の普及に勤めたのですが、文明開化の風潮で洋学が重んじられ、我が国伝統の倫理道徳に関する教育が軽視される傾向があり、これを憂いた明治天皇が明治23年に徳育の振興が大切であるとこの勅語を示されたそうです。
最近は教育勅語の現代語訳があちこちで目に入るようになってきました。国民道徳協会による現代語訳を紹介します。
?
私は、私達の祖先が、遠大な理想のもとに、道義国家の実現をめざして、日本の国をおはじめになったものと信じます。そして、国民は忠孝両全の道を全うして、全国民が心を合わせて努力した結果、今日に至るまで、見事な成果をあげて参りましたことは、もとより日本のすぐれた国柄の賜物といわねばなりませんが、私は教育の根本もまた、道義立国の達成にあると信じます。
国民の皆さんは、子は親に孝養を尽くし、兄弟・姉妹は互いに力を合わせて助け合い、夫婦は仲睦まじく解け合い、友人は胸襟を開いて信じ合い、そして自分の言動を慎み、全ての人々に愛の手を差し伸べ、学問を怠らず、職業に専念し、知識を養い、人格を磨き、さらに進んで、社会公共のために貢献し、また、法律や、秩序を守ることは勿論のこと、非常事態の発生の場合は、真心を捧げて、国の平和と安全に奉仕しなければなりません。そして、これらのことは、善良な国民としての当然の努めであるばかりでなく、また、私達の祖先が、今日まで身をもって示し残された伝統的美風を、さらにいっそう明らかにすることでもあります。
このような国民の歩むべき道は、祖先の教訓として、私達子孫の守らなければならないところであると共に、この教えは、昔も今も変わらぬ正しい道であり、また日本ばかりでなく、外国で行っても、間違いのない道でありますから、私もまた国民の皆さんと共に、祖父の教えを胸に抱いて、立派な日本人となるように、心から念願するものであります。
?
?
?
?
「明治の精神を考える」というタイトルであれば、富国強兵に触れなければなりません。
資本主義経済を発展させ国の財政を豊かにする「富国」と、軍備を充実させて欧米列強に負けない武力を持つ「強兵」、日本は勝ち目の薄い日露戦争に勝利し列強の仲間入りを果たしました。
しかし、この流れは第二次世界大戦の敗戦へと続きます。
7月16日の「明治の精神を考える 1.講演会に参加して」で紹介した講演会では、冒頭に、国旗「日の丸」に向かって起立し、国家「君が代」を斉唱しました。
テレビで見るスポーツの国際大会等での「君が代」斉唱のさい、口が動いていないスポーツ選手を見るたびに、「おまえは日本人か!」と思う私ですが、最近、日の丸に起立できない人もいてもおかしくないという思いをもつようになりました。
7月10日の「最近気になった言葉 3.生きがいのない話」で紹介した、木村浩子さんの「おきなわ土の宿物語」(小学館 1995年 1600円+税)では、第二次世界大戦末期の沖縄の様子が述べられています。
洞窟に軍も住民も避難したさい、赤ん坊の泣き声に、米軍に見つかる方静かにさせろといわれ、母がわが子の首を絞める様子、日の丸のもと「天皇陛下万才」と叫びながら自決する人々の様子が述べられています。
若者が戦地に向かわされ、身体障害者や老人、子供など生きる力の弱いものから切り捨てられるという一面を戦争は持っています。
身内が戦争の犠牲になった人たちの中には、日の丸に向かい合いたくないという感情を持つ人もいるでしょう。
?
?
?
?
鎖国をしていた江戸時代から、欧米に追いつけ追い越せとなった明治時代。
外部環境の変化に気づき、それに対応するために内部を変化させていったということです。
これは経営学でいうコンテンジェンシー理論(環境適合理論)です。
コンテンジェンシー理論では、外部環境と内部環境を取り持つものはコンテクスト、具体的には目標や規模や技術ですが、つまり、外部の変化に対して組織がどのような目標を立てるか(それには環境と継続的に相互作用を交わしてきた結果としての規模や技術が影響する)、それが内部環境である組織構造と個人属性、組織過程に影響し、組織としてどうのような成果を上げるのかに影響するといっています。
その意味では、グローバル化が進めば進むほど、どの国も世界という外部環境の変化に対応することになり、同じ方向の目的を持つのであれば、徐々にどの国もおなじような内部構造(組織構造、個人属性、組織過程)となるのかもしれません。
となると、国際社会の中で日本は日本として独自のどのような目的を持つか、それが日本人らしさを担保するものとなるといえるのでしょう。
?
皆様の励ましのクリック →?
本当にありがとうございます。
現在は北海道のカテゴリで18位前後です。
(現在、携帯でみるとバナーが表示されないケースもあります。そのさいはリンク先と表示された部分をクリックするかもしくはhttp://blog.with2.net/link.php?737084をクリック願います。
会社や家庭から上記のバナーを一日に一度クリックすることでポイントがカウントされてます。 ポイントの反映には30分~1時間ほどかかります)